先日、惜しまれながらもこの世を去った俳優のロビン・ウィリアムズ。「アラジン」のランプの魔人ジーニーの声を担当したのをきっかけに実写映画「フラバー」でも主役を張るなどなにかとディズニーとつながりの深い俳優だが、そんな彼が実は一度ディズニーと揉めに揉めたのをご存じだろうか。両者の間に一体なにがあったのか。
ロビン・ウィリアムズとディズニーの関係
ロビン・ウィリアムズは、「アラジン」のセリフの大部分をアドリブでこなしたと言われており、舞台コメディーで培った彼の即興のスキルが大反響を呼んだ。
しかしその裏で制作側のディズニーとロビン・ウィリアムズは実はあることをきっかけに喧嘩していた。ディズニーはロビン・ウィリアムズの早口で、ユーモアに富んだ喋りを「アラジン」の世界にはめこもうと、ジーニー役をオファー。ロビン・ウィリアムズも子供たちが喜ぶならとこれを承諾した。
しかしロビン・ウィリアムズに支払われたギャラはわずか7万5000ドル、条件はマーケティングに彼の名前を利用しないこと、ポスターなどの広告でジーニーを大きく扱わないこと(全体の25%以下にする)だった。当時すでに映画一本出演すれば800万ドルは稼いでいたロビン・ウィリアムズにしてみればタダ同然の友情出演だったのだ。
報道によると、ディズニーはロビン・ウィリアムズが出した2つの条件の両方を破ったと言われている。というのもレコーディングを終えた時点で、ロビン・ウィリアムズは30時間分もの即興のセリフをテープに残していた。
そのどれもがあまりにも質が高く、削るのが難しく、自然と彼のパートを増やさざるを得なかったのである。これにより宣伝でも自然とジーニーの扱いが大きくなってしまったのだ。
ロビン・ウィリアムズが二つの条件を出したのは、物を売るために自分を利用されるのが嫌だったからである。特に子供好きのロビン・ウィリアムズにとって子供相手の商売でそれをされるのに嫌悪感を抱いていたのかもしれない。そもそも彼がこの役を引き受けたのは子供たちを楽しませるためであって、少なくともお金のためじゃなかったのだから。
しかしながらディズニーとロビン・ウィリアムズはそうした条件について書面で契約を交わしたわけではなかった。つまり法的にはディズニーは違反行為はしておらず、それに対してロビン・ウィリアムズは男と男の約束を破られたといった思いになったのだ。その後、しばらくロビン・ウィリアムズはディズニーが制作、あるいは出資する映画のオファーを受けても、脚本を読みさえせず、「もう彼らのためには映画はやらない」と突き返していたという。
これにはディズニーも悪く思ったのか、ロビン・ウィリアムズに100万ドル以上の価値のあるピカソの絵をプレゼントしたりして、彼の怒りをなだめようとした。しかしそれでもロビン・ウィリアムズの怒りは収まらなかった。ロビン・ウィリアムズはそのときのことをこう振り返っている。
「ディズニーと仕事をしたら、なんでミッキーマウスに指が4本しかないか気が付くよ。それはミッキーが小切手を拾わないようにするためだよ」。
ちなみにアラジンの続編「アラジン ジャファーの逆襲」でジーニー役をロビン・ウィリアムズではなくダン・カステラネタが引き受けたのはこのときのトラブルが原因である。
ディズニーとロビン・ウィリアムズが仲直りしたのはアラジンが公開されてから2年以上も過ぎた後、ディズニー映画の制作責任者にジョー・ロスが就任してからのことである。
ジョー・ロスはメディアに対し、「我々が謝罪しないといけないのは明白。ロビンのことは何年も知っているけど、彼が怒る理由がお金だったことはない。問題はモラルなんだ」とコメントしている。
これを機にロビン・ウィリアムズは「アラジン完結編 盗賊王の伝説」でディズニー映画に復帰、両者の関係はやっとのこと修復した。ロビン・ウィリアムズにはピカソの絵もなんの価値もないのである。彼はなにより誠意を重んじる男だったのだ。ちなみにロビン・ウィリアムズが亡くなった翌日、ディズニーはジーニーの絵を通じて次のような追悼のコメントをした。
「ロビン・ウィリアムズという才能溢れ、我々をいつも感動させ、笑わせてくれた男を失い、我々は深く悲しんでいます。すばらしい俳優、天才コメディアン、ロビンは世界で最も人気のある、ABC局の「マーク&ミンディー」のエイリアンやディズニーの「アラジン」のジーニーなどのキャラクターを演じたということで、人々の記憶に永遠に残るでしょう。
彼はディズニーの真の伝説であり、我々の愛するファミリーです。我々も世界中の喪に服すロビンの友人、ファンと共に我々の気持ちとお悔やみをこの大変な時期にご家族にお送りしたいと思います。」